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2023.09.18

ニスコ進学スクール あいの里教室

【ニスコラム】現代社会を正しくとらえる。そのための記述力

こんにちは、ニスコ進学スクールあいの里教室の川西です。

中3もあと半年で高校受験。秋は学力テストの季節で、社会では公民分野がどんどん進む季節です。さて、公民の記述で定番の問題があるのでご紹介します。

問. 政治における三権分立(権力分立)はなぜ行われるのか、簡単に説明しなさい。

模範解答:国家権力が一つの機関に集中することを防ぎ、国民の生命や自由(人権)が奪われにくいようにするため。

 さて、覚えてしまえばそれで終わりなのですが、正確に覚えられず誤答となってしまう例として、次のようなものが挙げられるのでご紹介します。

誤答①:国家権力が一つの機関に集中し、国民の人権が奪われるから。

   

...おしいですね!これは「設問をよく読んでいないパターン」です。「三権分立はなぜ行われるのか」に対して「~奪われるから。」と答えたのでは、三権分立によって人権が奪われるように読み取れてしまいます。

誤答②:独裁政治がおこってしまうのを防ぐため。

...これもだめです。理解の入り口としては良いのですが、入り口で止まってしまっています。

前提として独裁政治を完全な悪としています。

「え?これ正解じゃだめなの?」

 と思われた方へ。今回はこの誤答について深く考えていくことで、現代社会をより深く読み解いていきましょう。

(少々大人向けの文章です。中学3年生は、せめて太文字の意味を正確に思い出すきっかけにしてください。)

 まず、独裁政治には歴史上多くの負の面がつきまとってきたことは確かです。民主主義国の旗手であるイギリス、フランスにも、かつて絶対王政による専制政治の時代があり、アメリカにも植民地支配の中から立ち上がった歴史があります。

 ドイツや日本、イタリアはファシズムの台頭によってそれまでの民主主義が否定され、

人権を著しく抑圧した時代がありました。

 歴史的反省と教育の結果、共通認識として「独裁政治=悪」というのは民主主義国の人々の脳に焼き付いていることですが、それを「当然のこと」と疑いもせず、「正義」として振りかざ

し、そうでない側を敵視することに関しては、危険性があります。そしてそれは現代の国際社会の大きな溝として実際に横たわっています。

 

 今でも、イスラム教圏、アフリカ大陸の多くの国で独裁的な政治体制がしかれており、またそうした国ではロシア・中国の影響力が強く、グローバルサウス(南半球を中心とする発展途上国)の囲い込みを急いでいます。

 イスラム教圏の国々、アフリカ大陸の国々、ロシア連邦、中華人民共和国などにあてはまることですが、多数の民族・部族からなる国家だった場合、または現在の政治体制になってからの歴史が浅い場合、民主主義の政治よりも独裁政治のほうがマッチしていることもありえます。

(それを無理やりアメリカが民主化させようとして明確に失敗した例として、アフガニスタンがあります。個人的には無意味だったというのではなく、やり方がまずかったのだと思います。)

そうした地域が将来、長い紛争と犠牲の上に、明確な意義を感じて民主化することはもちろんありますし、その逆、民主主義国家がクーデターで軍事的独裁国家になることもありえます。

 独裁政治にも「政治決定に時間がかからず、機敏に国際情勢に反応できる」という長所があります。今回の例に限らず、なにかの長所と短所を意識し、現状の問題点を正確に把握することは、より高解像度で世界を見渡せる能力につながるはずです。

そしてそれは他人事ではなく、自国の政治を監視する目を養うための訓練にもなります。

 社会とは、そのための教科です。受験のための暗記科目にとどまらない有意義な時間にしてほしいので、私も良い授業ができるよう日々精進しています!

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