こんにちは、平岡中央教室担当小中谷です。
昨日(10/6)、中1社会での授業のこと。
「先生、これなんて読みますか」...ほう、どれどれ。その文字とは
「陽」でもなく、「場」でもないこの「煬」という漢字。
一生に一度しか目にしないであろうこの漢字。
音読みは「ヨウ」、訓読みは「あぶ‐る」。
意味は、熱で金属を溶かす。
そして「帝」は音読みで「テイ」が基本ですが、
この場合は、「ダイ」と読みます。
というのは、漢字の音読みには、漢音、唐音、呉音など様々な呼び方があります。
中国も広いですから、地方によって同じ漢字でも読み方が異なるそうです。
「ダイ」はその中でも「呉音」、南方系の発音に分類されます。たとえば「香港」。
中国南方の都市で、われわれは「ホンコン」と呼びますね。
しかし首都北京近辺の読み方では「シャンガン」といいます。
本題に戻ります。「煬帝」とは?
熱で金属を溶かす皇帝?
さては、化学実験が好きな皇帝だったのか?
...そんなことはありません。
「煬」にはもう一つ、「いたぶる」という意味もあるそうです。
つまり、「人民をいたぶった皇帝」、というありがたくない称号(正確には諡号:しごう、死後に贈られる)を贈られた、称賛には値しない人物だったようです。
以下、宮崎市定「隋の煬帝」(中央公論社1987)から簡単に彼の一生を紹介しましょう。
もしも、煬帝という人物を一言であらわせ、といわれたら私はためらわずに
「天才」と呼びます。ただし、「挫折した」という修飾語をつけて。
隋の煬帝
・生没年 西暦569年~618年
・皇帝在位 西暦604年~618年
・詩人としての才能に恵まれていた。
隋の初代皇帝文帝の次男。
普通、長男が帝位をつぐのが普通ですが、長男が両親に嫌われ、素行の良かった(フリをしていた)次男であった彼が後継者候補になります。
父文帝が病気になり、さあ皇帝になれるぞ、というときに彼は猫かぶりをやめ、本来の奔放さを出し始めます(ネタばらしはしません)。
そのため、父文帝は煬帝に帝位をつがせないように画策するのですが...。
◇煬帝の業績
少しだけ、隋という王朝を紹介しますね。
40年足らずで滅んでしまいますが、300年ぶりに中国を再統一したすごい王朝なんです。
基礎を固めた父文帝はなかなかの傑物。
ここで中国の地形について皆さんにクエスチョン!
(質問)中国の「河川」の特徴とは?
(ヒント)流れ方が一定。ここまで言えばわかりますか~?
(答え)西から東に流れる河川しかなく、南北に流れる河川がない。
実は、煬帝、南北を結ぶ河川がないのなら、作ってしまえばいいじゃな~い、と、あの「大運河」を建設させたのです。300年以上バラバラだった中国ですが、その間に未開だった長江流域の開拓が進み、そこからの物資の運搬は隋にとっては大きな課題でした。
ただ...。煬帝の江南(長江以南)旅行のための水路、という説もありますが...。
煬帝という人物はおそらく、40歳を過ぎるまで「失敗」らしい失敗をしたことがなかったような気がします。詩の才能にも恵まれ、政治家としてのセンスもある。しかし...。
◇煬帝の失敗、そして挫折
煬帝は、隋に対して不遜な態度をとる朝鮮半島の高句麗に向けて、約120万もの大軍を発します。しかし、この遠征は失敗に終わります。兵の数が多ければ多い方が良い、というわけではありません。兵士の食料、馬の餌、荷物を運ぶ牛の餌、とにかく多大な物資を消費します。
現在と違い、当時の人は地元にとどまりいろいろな場所に行くわけではありませんから、長距離移動による疲労、抵抗力が落ちたところで風土病にかかり、最悪命を落とすことになります。
遠征は3度行われますが全て失敗、信頼していた腹心の反乱もあり、失敗知らずの天才煬帝は、江南に引きこもります。その江南の地で、煬帝は兵士の反乱にあい、あえない最期を迎えるのです。
◇小さなうちに失敗するのは大事なこと
さて、私は失敗することは大切なことだと考えております。ただし「小さな」うちに、ですが。失敗は小さなうちにその芽を摘み取っていく、失敗をしらないままに人生を歩んでいった結果、一度挫折するとなかなか立ち直るのは難しい、私は隋の煬帝からそのようなことを学びました。
平岡中央中は定期試験まで一カ月を切りました。
テスト本番で大きな失敗をしないために、練習期間中に不明点を発見し、その芽を摘んでいく。
そして、本番で大きな成功をおさめる。
平岡中央のみんな、最高の11月2日にしようぜ!
(参考図書)宮崎市定「隋の煬帝」(中央公論社1987)
※追記 中国史を学びたい、という方へ。
故宮崎市定氏
初心者にもわかりやすい、ウィットに富んだ文章がいいです。
『雍正帝』がとくに面白い。
杉山正明氏
中国、という枠ではありませんがモンゴル史は断然杉山氏。
歴史学とはこう学ぶものだ!というのを教えてくれました。
講談社現代新書『モンゴル帝国の興亡(上)(下)』
中国歴史人物選『耶律楚材』
とくにおススメです。
◇さいごに
・無料体験のご案内
平岡中央教室では、小学1年から中学3年まで、幅広く学習指導を行っております。
一度教室へ足を運んでみませんか?
・冬期講習会の受付
講習会のお席には限りがございます。
お早目にお問合せくださいますよう、お願い申し上げます。
◎洞察力検定のご案内
→[ 洞察力検定ご案内 ]
◎洞察力検定例題
→[ 洞察力検定例題 ]
◎冬期講習会
→[ 2023冬期講習会概要 ]